私は彼に愛されているらしい
私は竹内くんの連絡先を知らない。

明日どうするのとか聞きたいのに就業中は話しかけるタイミングも無い。

目すらも合わないなんてどういうことだと思ったが、思えばこれが今までの当たり前だった。そしてため息を1つ。

定時で上るっぽいことを言っていたけど、時間もどこに行けばいいかも知らされて無い。

そう。誘われたはいいけど本気かどうか怪しいところがモヤモヤしてるんだ。彼のことだから遊びとか冗談ではないと思いたいけど、約束がハッキリした形にならないのは気持ち悪い。

「どこに食事に行くんですか?」

小さな唸り声を上げる私に有紗が聞いてきた。

「知らない。時間だって聞かされてないよ。」

「じゃあこれからか。」

そっか、これからってことなのか。じゃあ待っていればいいのかな。

昨日の今日だしまだ午前が終わったばかりだ、これからチャンスはいくらでもある。放ったらかしってことはないだろうから気長にまってればいいのかな。

そう楽観的に思考が進んでとりあえずの堕ちた状態からは抜け出せた。

でも結局、その日は話すどころか目を合わせることも無いまま終わってしまったのだ。

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