私は彼に愛されているらしい

からかわれる

迎えた金曜日。

どこへ、いつ、そんな情報も手に入らないまま私は悶々としたオーラを引き連れて出社をした。


「今度はお酒が飲めた方がいいですね。」


その言葉を思い出して真面目に電車を選んだ自分をどう表現していいか分からない。

頭を抱える?地団太を踏む?どちらにせよ言いたいことは同じだ。

「何やってんのよ、私。」

車を置いてくるなんてどこまで楽しみにしちゃってんのよ。らしくない行動だって自分でも分かってる、だからよく分からない感覚に頭を抱えてしまうんだ。

「みちるさん?珍しいですね、電車ですか?」

改札を出たあたりで後ろから声がかかり振り向いた。うん、声でもう誰だか分かっている。今日も女子力発動中の有紗だ。

そういや最近になって車を手放した有紗は電車通勤だって言ってた。

「うん。おはよう、有紗。」

「おはようございます。車の調子でも悪いんですか?今日って確か約束でしたよね。」

「うん。お酒を飲むらしいから車は止めといたの。」

「連絡来たんですか!?」

嬉しそうな顔をして尋ねる有紗とは対象に私の表情は情けなく眉が下がる。

「ううん。連絡先知らないまんま。」

言ってて悲しくなってきた。

「おー!みちるさんを振り回すなんて竹内さんもやりますね。」

「どういう意味よ。」

「だってみちるさん、天然小悪魔で周りの男性振り回しまくってるじゃないですか。」

掌を上下にパタパタさせて有紗は楽しそうに笑った。ちょっとは私に同情したり竹内くんに対する文句を言ってくれるかと思ったのにとんだ期待外れ。

ん?天然小悪魔って何だ?振り回すって?

< 35 / 138 >

この作品をシェア

pagetop