私は彼に愛されているらしい
「もう…振り回されてばっかりだ。」

ちょ、ちょっと待って。

「それはこっちのセリフでしょ!」

私の声に反応して竹内くんが顔を上げた。

「俺のどこが。」

「だって会社と全然違う!意地悪な態度とってくるし、思わせぶりなことしたかと思ったら…あっけなく突き放すし!」

「それこそ俺のセリフだろ?そっくりそのまま返してやるよ。」

「私のどこが!」

「究極の鈍感かと思いきや変に気が付いて思わせぶりな態度をとったり。このままこっちの思い通りにいくのかと思いきやあっさり掌返したように有り得ないこと言い出すし。腹が立つったらありゃしねえ。」

「失礼ね!私は思ったように動いてるだけなの!」

「その動物的本能が周りに害を及ぼすってんだよ。」

なんだそれ、酷い言われ様じゃないの!言っては言われるのテンポいい繰り返しに終止符を打った竹内くんの言葉は私の中にあった大人のスイッチをオフにした。

冗談じゃない、言われっぱなしなんて納得いかない!

「そっちだって本能むき出しじゃないの!」

「どう見たって紳士だろ!」

嘘吐き!!ここが外だってどうでもいい、周りに人通りがないのはもう分かりきったことだ。通り過ぎる車の音が私たちの声をいい感じに抑えてくれているから近所迷惑までにはいかないよね!

だってどの口が言える!?

「勝手にキスしたじゃない!!」

勢いよく立ち上がった私は見下ろす形で竹内くんに叫んだ。

だってそうでしょう?頭を撫でられて少し気を許したところに強引に入り込んできた。そのおかげで。

「おかげで私っ…竹内くんのことで頭がいっぱいなんだから!!」

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