私は彼に愛されているらしい
強く握りしめた拳が痛い。

どうしてもこの数日で溜まった不満を吐き出したくて、興奮状態の私は構うことなくさらに拳を握った。

「キスして好きだって言われて。なのに連絡無くて、遊ばれたんじゃないかって。印象が悪くなかった分、職場にも不安が出来て。でも嘘を言われたような気にもなれなくて。なのに直前になって残業って…仕事が忙しいのも分かるけど!!」

仕事を優先させる気持ちも、私の中では自分でも選んでしまうことだから責めるつもりは無い。でも顔を突き合わせているのに何か出来るでしょう?

それとも竹内くんには軽い気持ちでしたことだったの?あんたいくつだって言われた私はやっぱり幼い感覚しかもっていないんだなんて落ち込んだりもしたのに。

「怒りたいのはこっちよ!」

怒りで感情が高まり涙が出てきた。

悔しい、こんなことで泣きたくないのに。これじゃあ負けましたって言ってるようなものだ。悔しい。

「もう本当…勘弁してほしい。」

さっきまでの勢いはどこへやら、私は消えそうな声で竹内くんの言葉を頂いた。

惨めだ。惨めだ惨めだ、惨めだ!私もう27歳なのに。

「ずっと…長く付き合ってる彼氏がいそうとか言われたり、好きになった人からも女として見れないとか…好意を持ってくれてるかもしれない人がいても中々告白されないから、私って自意識過剰なんだろうなとか…。恋愛に対して本当うまくいかなくて。」

一度走り出した言葉は止まらない。

何を言ってるんだろうって頭の中で首を振っていても口は止まってくれなかった。

「彼氏が出来ても1年ほどで別れちゃうし、今までだって3人しか付き合ったことないし。ベテランの人たちからは可愛がってもらえるから私きっと同年代に向いてないんだって思って…もう全部諦めてた。周りは私を恋愛対象として見てくれていないんだって。」

でも私だって何もしなかった訳じゃない。

必死になって彼氏を作ろうと頑張った時期もあった。

友達からの紹介、同窓会、合コン、無駄に出会いを求めて歩き回った時期もあった。デートをした相手だって何人もいるの。

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