私は彼に愛されているらしい
「デートした人から隙があるとか言われても手を出されない。私にとっても次にもう一度会いたいと思う人は出てこなかった。前に竹内くんが言ったように…男の人は女なら誰でもいいんだって思った時も何回かあったよ。」

そんなことを繰り返していたら、相手を探すことさえも億劫になってしまった。

「些細な事の積み重ねかもしれない。そんなこと気にしてたら彼氏は出来ないって言われるけど、私もう自分自身の恋愛とかよく分かんないの。だって…。」

私のことをいいと思ってくれたのなら何か言ってくれるでしょう?

その言葉は詰まって口に出せなかった。だってそれは傲慢だ。察すればすぐに分かると言われてしまうだけだ、でもどうしようもないの。私は気付けない。

もう27歳なのに。

それなりに経験を積んだ大人である筈なのに。

「恋愛って分かんない。大人の駆け引きとか分かんない。」

駄目だ、隠したいことが出てしまう。

「いきなりキスされたのなんて初めてだもん。」

もう頭の中がぐちゃぐちゃだ。

「若い子じゃあるまいし、こんなことで翻弄されるなんてって自分でも思うよ。だって私もう27だし、それなりに大人なんだからさ。でも駄目で…疑問符とか感嘆符とかずっと出続けてどうしようもなくて。」

とんだお子様なんて笑われるに決まってる。年上なのにどうなの?って。今日だってちょっと考えたらデートなんだってことくらい分かったよ。普段の私ならきっと気付いた筈だ。

でもしょうがない。今は心がぐちゃぐちゃに乱されて余裕がないの。

キス1つ。たったそれだけで不安定になる、これが私なんだ。

「遊びでやったのかもしれないのに、軽い気持ちだったかもしれないのに。そう考えれば考える程…怒りよりも悲しくて、ターゲットにされるくらい容易い女なんだって思って。でも好きだって言ってくれたことは信じたいから…もう頭の中ぐちゃぐちゃで。」

ずっと。

「竹内くんのことばかり考えてた。」

唯一涙を流さなかった自分を褒めてあげたい。あとは駄目だ、さらけ出しちゃった。

よりによって同じ職場の人に、もしかしたら週明けには清水は恋愛初心者だって周りに知れ渡ってしまうかもしれないのにやってしまった。

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