私は彼に愛されているらしい
「予想通りだな。」

今まさに私が呟いたことが書かれてあって驚いた。彼氏はいないでしょう、そう決めつけの言葉に多少の怒りも覚えたけどここは我慢だ。

「最近巡り合えました。とても素敵な人です、紹介しますので会ってあげてください。」

「ええっ!?」

「送れ。」

「ええー…。」

何だこの展開は。半分泣きべそかきながらやけくそで文字にして送り返してやった。

紹介しろと言われたらどうしよう。
なれそめを聞かれたらどうしよう。

そんなことを考えながら悶々としていると不意に異変に気が付いた。

あれ。メールが返ってこない。

「あれ?」

「これで終了だな。既婚者はギャンブルには出ませんっと。」

アイスコーヒーを飲み干しながら竹内くんはつまらなさそうに身体を椅子に預けた。私はと言えばスマホと竹内くんの交互を見つめて状況を理解しようと試みる。

あれ。本当に終わったの?

「彼氏がいるからって断れば大抵は終わる。それでもしつこく言ってくる奴は本気だからちゃんと相手しなきゃ駄目だけどな。誠意を示せよ?」

「あ、うん。…分かった。」

終わったはいいけど、これから先どうしたらいいのだろう。相手は課長で仕事上関わりは無いとは言い切れないのに。

「何も無かったように接する、それが一番だ。あのおっさんだってそこまで執着はしないし馬鹿じゃない。」

「そんなもん?」

「あんただって無意識にやってんだろ。気付いてもらえず散った野郎を何人か見たぞ?」

「ええっ!?」

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