私は彼に愛されているらしい
「時間を気にせずに話をしたかったんですよ。だからほら、遅くまでやってる店に行こうとしてるんです。」

「信じられない!」

「じゃあ清水さんが店を選びます?」

「そういう意味じゃなくて~…ああ、もう!」

何を言っても響かない相手に私は完全に振り回されていた。いい年した大人なのに憤りから地団駄踏んで埋まり声を漏らす。

「あはは、振り回されてる。」

「なんでそんなに上機嫌なのよ!腹立つなあ!」

「上機嫌にもなるでしょ。だって企みが成功したんですよ?」

「そうね、見事に私は残業させられて終電逃しました!」

不機嫌丸出しで突っかかるように吐き捨ててやる、どうせ私は手の上で転がされたわよ。貴方の計算通りに全てなぞってあげたわよ!

思い通りにされていたなんて考えるだけで腹が立つ。

「まあ、それもそうですけどね。」

そう言いながら竹内くんは穏やかな笑みを浮かべて私を見つめた。さっきまでとは違う空気に私の刺々しいものが中和されてしまう。

「…何よ。」

苦し紛れの言葉に竹内くんは目を細めた。

「清水さんが俺のこと好きになってくれたなって。」

は?

はい?

「私が?」

竹内くんを?

「そんな訳…!」

「いやー。こうなると週明けに片桐さんに報告しておかないとな。」

「ちょっと何で片桐さんが出てくるのよ!」

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