私は彼に愛されているらしい
「今のところ予定もないからそのまま答えたんだけど…何でそんなこと聞くのってきいたら、今の時期は結婚式が多いので~って言われてさ。」

みちるさんの話はちゃんと聞こえてきてる。…半分流しているけど、ちゃんと内容も把握しながら自分の中で緊急会議だって開いているのだ。

付き合って3か月、何度も言うが俺だってそれなりに清水みちるという人物に慣れてきた。

彼女の良さも分かってるし彼女の行動パターンだって何となくは掴めるくらいになってる筈だ。

筈だ…ったんだよな。

畜生、俺が甘かったのか。

ずっとみちるさんを観察してきた俺は付き合う前から彼女の危うさは知っていたんだ。

彼女が正直すぎるということに。

さすがに大人なんだから思っていることを胸の内に隠してやり過ごす技は身に付けている、でも心を許している相手にはそれが出来ずに思ったことをそのまま口にしてしまうということが実のところ多々あるのだ。

よく一緒にいる吉澤さんにもそうだし、片桐さんにもそう。俺はあんまり見ていないけどきっと持田さんにもそうなんだろうと思う。

他にも仲がいい相手ならズバッと口にしてしまっている場面を見たことあるが、彼女の長所でもある爆弾のあとの処理能力の高さでカバー出来ていた。人のいいところを見つける能力の高さでちゃんとフォローしているのだ、あれは俺には真似できない高度な技だと認めている。

何より俺には心を許してくれているんだなという嬉しさにも繋がるし、裏表のない人間性に安心もする…けど、今回のはちょっと俺的にはキツイぞ。

「そういえば今度結婚式あるなとか、確かに秋って過ごしやすいから結婚式多いよね~とか思い出したんだけどね?」

全く俺の方を気にしてないもんだから、今の俺がどんな様子かもみちるさんが気付いていない。

素直すぎる彼女の考えは彼女が思う以上に俺には伝わってきているんだ。

要はあれだろ、みちるさん。

「どうも私の答えには興味なくって、自分の中の何かを吐き出そうとしているっぽかったのよ。結婚、有紗は誰かからせっつかれたのかな?」

あんたは俺との結婚を意識するよりも、持田さんが結婚を口にした理由が気になるんだよな?

ああそうですか。予想外ですよ、むしろ予想以上です。

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