私は彼に愛されているらしい
「みちるさんって結婚願望あんの?」

「結婚願望?」

目を丸くして復唱するが、俺が無言で頷いたのを確認すると目線を上にして小さな唸り声を出した。

畜生、腹が立つな。

この考える素振りは明らかに俺との結婚を意識したものじゃないし、そう見せないように演じている訳でも無い。この人は繕って演じることが出来ない人だからな。

全てが素直で正直な反応なんだ。

本当にまったく関係ない人から質問されたように考えるから嫌になるよ。

いいところだよ?…今の俺は傷付いてるけどさ。

「将来…1人でいるところが想像できないから、多分あるんだと思う。…うん、あるな。」

噛みしめるように呟くとようやく俺の方に視線を戻してにこりと微笑んだ。そうだよな、次はそうなるよな。

「アカツキくんは?」

私たちの未来を考えてくれてるの?

…そんな思いが微塵にも入っていない声で聞いてくるから思わず小さなため息を吐いてしまった。

恋人に聞かれる内容にしては随分とドライな雰囲気だ。

東芝さんが言っていたのはこういうことだったんだろう、それを俺と片桐さんが少し違う方向に考えてしまった。

つまりは俺たちの早合点だったって訳か。

「…俺か。」

ポツリと呟いて疲労感に襲われた体を台に預ける。

視界の端でみちるさんが頷いたのは分かったが、どうでもよくなって投げ出したい気持ちに駆られた。恋人だけど、ただの恋人だと言われたような気がして心なしか体が重くなる。

「俺は自分が結婚できるなんて思ってない。」

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