私は彼に愛されているらしい
「だってみちるさんは鈍感だから。こっちが気を使っても無駄だって分かったから何も気にしないことにした。」

「はあ!?」

「打っても響かないんじゃ意味ないじゃん。」

「ちょっと!それ褒めてないよね!」

「ありがたいよ~?ほら開放的。」

「なんか嬉しくないよ!!」

あははと大口を開けて笑えば笑う程にみちるさんの機嫌は悪くなっていく。いや、ちょっと違うかな。拗ねていくと言った方がいいかも。

みちるさんは寛大な人だ。俺がどれだけ不機嫌になっても感化されて怒ったりはしない。普段からも文句は言われるけど怒る訳じゃなく拗ねることが殆どだ。しかもちょっと可愛い。

「ここは甘い感じになるところなんじゃないの!?」

「えー?そう?」

「どう考えたってそんな流れでしょ!信じらんない!」

「それをみちるさんが言う!?」

悔しさを抑えきれずに両手の拳を上下に振って憤りを露わにした。

ダメだ、可笑しすぎてまた大声で笑ってしまう。

「俺、みちるさんに振り回されるのクセになってきたかも。」

「はあ?何言ってんの、振り回されてるのはいつもこっち!それにさっきアカツキくん言ってたじゃない、自分は気付く人だって。」

「うん、みちるさんは鈍感だってね。」

「煩いなあ!だいたい気付くんなら振り回される何てことない筈でしょ!?」

だから俺が言うことはおかしいのだと彼女は怒気を含んだ表情で自信満々に両手を腰に当てた。

あはは、頑張って虚勢張ってる。こういうところも可愛らしいと思うんだけど、何かにつけて褒めると調子に乗るから滅多に口にしないようにしてるんだ。

その方がありがたみもありそうだし。

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