番外編☆獣系男子×子羊ちゃん
花火大会の開始時間が近づくにつれて
少しずつ会場の照明が
落とされていく。


雑踏のなかで蒼介さんと手をつないで

夜空を見上げながら

今か今かと、そのはじまりを待った。


「なんだか、ドキドキするね!」


そう言って、蒼介さんを見上げると、

蒼介さんも少し緊張した面持ちで
夜空を見つめていた。



深さをます暗闇のなかで、

蒼介さんと手をつなぎながら
花火が打ち上げられる瞬間を待つ。


すると、大きな破裂音を響かせて
ひとつめの花火があがった。


空中で弾けた火薬の音が
天空から地面に響き、

心臓の奥まで揺らすその爆発音
に体がしびれた。


「うわぁ…….すごい音っ!!

こんなに近くで見たの
初めて!!

すごいっ!!」



続けざまに大輪の花が夜空を次々と彩り、

その耳触りのいい破裂音が演出する
幻想的な夜に

あっという間に

引き込まれていった。



「すごい迫力だねっ!

蒼介さんは毎年花火大会来てるの?!」




…………蒼介さん……?




興奮したまま
手をつないだ蒼介さんを見上げると、

夜空に花開いた花火の艶やかな光に

蒼介さんの

美しい横顔が照らされた。




蒼介さんは

零れ落ちる涙を

拭うこともせずに


夜空に一瞬の輝きを散らす
美しい光の輪を


静かに見上げていた。




そ…う…すけさん………?


泣…いてる……?



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