番外編☆獣系男子×子羊ちゃん
次々と華やかな光の塊が
打ち上げられるたびに、

夜空が一瞬明るんでは
その闇を取り戻す。


蒼介さんの頬をつたう涙が、

光の粒を反射している。



「この花火さ、

望が生きてた頃、
毎年、病室から見てたんだよ。

あいつ、病院で
育ったようなもんだったから、

すごく楽しみにしててさ。


病室のなかって、
いっつも同じ温度に保たれててさ、

暑さも寒さも感じないんだよな。


なんか、
季節とか全然わかんねぇっていうかさ。


だから
病室から見えるこの花火だけが

望にとって唯一

夏を感じられるものだったんだよ。


それで、毎年病室に集まって
家族でこの花火大会見てた。

親父とかビールこっそり持ち込んでさ。

すごく楽しかったよ。」



そう言った蒼介さんは、

花火を見ながら
目を細めて小さく笑った。



< 195 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop