竜胆〜りんどう〜
オヤジとオフクロが席を立ち
部屋を出て行く

オレと秀は頭を下げ二人を見送る

「…京吾、報告にちゃんと来なさい
コレはアンタだけの問題じゃない
わかった?」

部屋を出る前
厳しい顔で言い募ったオフクロは
完全に"姐"の顔

頭を下げ返事の代わりとした

ママも二人を見送りに出ていき
やっと一服吸えると
ソファへドカリと座った

「…オイ、秀車廻せ
オレも瑠李んとこ戻るぞ」

無言で頷き部屋を出て行く秀
何か言いたそうな顔だが
今此処で言うべきではないと
判断したのだろう

タバコの煙を肺に送り吐き出した

うめぇ…

また部屋のドアが開く
秀かと思い立ち上がればママだった

「若…
私…」

何か言い淀んでいたが時間切れ

「若、車が来ました」
抑揚のねぇ秀の声が聞こえた

「…アイツが落ち着いたら
ココに"顔見せ"に来る
そん時は頼む」

そうママに告げVIPルームを出て行った

煌びやかなホール
オンナがオレに声を掛けて貰おうと
上目遣いで見てくるが
全く興味もわかねぇ

黒服が頭を下げオレを送り出す

当分来たくねぇ

こんなに夜の店が煩わしいと思ったのは
初めてだった

車のドアを閉め静かに動き出す
目を瞑りこれからのコトを考える

「若、
「秀、後にしてくれ…
今から言うコトを即座に対応しろ
郡司、オマエもだ」

"瑠李を守る"
今のオレの最優先事項
やるべきコトをやり、最善の手を尽くす

さて…
眠り姫が起きるまでに整えとかねぇとな

ククっと笑ったのを
前の二人が訝し気に見ていた



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