君がため惜しからざりし命さへ
「…あ、まだ名前 言ってなかったね 笑
私"美冬"って言うんだ~。
よろしくね♡」
私 殆ど教室から出ないから…、
B組の女子、全然 分かんない。
…こんな可愛い子、初めて見た。
顔も可愛いんだけど、
何て言うか…、雰囲気が とにかく可愛い。
ふわふわ してて、"女の子"って感じ で、
まさに、天使。
それに"美冬"って名前が、似合い過ぎる。
「あ、私は…深谷。
深谷…ミリア…です」
「…ミリアちゃん ね!
ねぇ ミリアちゃん って、テニスしたこと あるの?
すっごい上手いね!」
…私は、自分の名前が、嫌い。
"ミリア"って名前 自体に恨みは ないんだけど、
自分の顔と、合ってないから。
でも彼女…美冬ちゃんは、
私の名前を聞いても、そこには全然 触れなかった。
良い名前だね なんていう見え透いた お世辞も、
"似合う"とも"似合わない"とも…、何にも言わなかった。
その矢鱈に踏み込んで来ない絶妙な距離感と空気感が心地よかった。
それに雰囲気が すごく ふわふわ してて…
尖ってない、まぁるい感じが 何だか、軟式のテニス ボールみたいな人だな って、…思った。