君がため惜しからざりし命さへ
「ミリアちゃん、
今日も一緒に いい??」
次の体育の時間、彼女は また私の所に やって来た。
…何で私、なんだろう…?
美冬ちゃんは いつも皆に囲まれてるから、
組む人が居ない って事は無いと思うんだけど…。
不思議に思いながらも、また一緒にテニスをした。
前に本人が言っていた通り、本当に運動が苦手みたいで ラリーは全然 続かないけど、
眉毛を下げて一生懸命 謝る姿とか、ボールを取りに ちょこちょこ走り回る姿とかが本当に可愛くて、
とにかく、癒される。
普段の私の心って かなり荒んでる と 思うんだけど、
そんな私の心が、彼女と一緒に居る間だけは、信じられない位 穏やかに なっていく。
もっと ずっと彼女と一緒に居たい とか、
体育の時間が終わって、彼女が同じクラスの子達の所に戻ってしまうのが寂しい とか…
人を信じたり、誰かに依存したり するのを ずっと避けて来たのに、
こんな事 考えちゃって大丈夫かな、私……。
「今日も ありがとう、ミリアちゃん!
やっぱミリアちゃん、テニスめっちゃ上手いね~♡♡」
キラキラした目で言われて、思わず また反射的に目を逸らす。
―あなたは、人の心を掴むのが めっちゃ上手いよね……―
そう口から出かかった けど、唾と一緒に ごくり と 飲み込んだ。
「そ、そんな事ない…
…普通」
飲み込んで代わりに出した言葉は、我ながら可愛げの無い台詞だったけど、
今更 引っ込められる訳も無く…
ただ、嫌われたかな?って、絶望的に思った。