君がため惜しからざりし命さへ
…いつ、だったかな?
暗闇の中 動けなかった僕に餌として与えられたのが、
人間の心臓だった。
ただ美味しくて、
でも新鮮な方が もっと美味しい って教えて貰って、
採り方も教えて貰って…
初めて活きたのを食べたら、本当に美味しかった。
でも その時、
人間の恐怖に満ちた眼を見て、疑問に思った。
ただ美味しい物を食べたいだけ なのに、生きる為に食べ物が欲しいだけ なのに、
何で こんなに恐れられなきゃ いけないんだろう って、
僕は何か間違った事を してるんじゃ ないか って…。
でも、そんな疑問は一瞬で、
結局 生きる為に食べる事も、美味しい物を食べたい っていう欲求も、
人間が人間の食べ物に対して思ってる事と同じ なんじゃないか って思って、
いつの間にか消え去っていた。
だって 人間の食べ物になる動物だって、
僕に心臓を食べられる人間と、同じ眼を してる。