隣の津川さん
「どうして、津川さん?」

本田は抱きしめられているため、やっとの思いで声をなんとか絞り出している。



津川さん、やっと力を抜いて、本田を解放した。


が、本田の両肩をしっかりつかんでまっすぐに本田を見つめる。



「こんなひどい怪我をさせられて・・・いったい何があったんですか!」


「いや・・・これは・・・。」


「まさか、暴漢に襲われたとか!」


「いえ・・・そういうんじゃなくて・・・。」


「まさか!」


津川さんは葛巻さんと宮田のばあさんをにらみつけた。


「ち、違います。この方たちはまったく無実です。」



まったくその通り。

知らないとは罪なことだ。

他でもない津川さんちのドアでこうなったのである。



「本田さん、7時半には帰られるって言ってたじゃないですか!」



そうだ、確かに、今朝はそう言った。

本田、慌てて部屋の時計に目をやると・・・



9時10分。



「あ・・・。」
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