隣の津川さん
「違います。まったくの誤解です」

津川さん、おばば二人に囲まれてたじたじだ。

「サラは僕の娘です。別れた妻との間にできた一人娘です」

一人娘?

え?

「もしかして、前に津川さんちにあった写真の女の子かい?」

葛巻さんが声をあげた。

「はい、その子です。あれは15年くらい前に撮った写真だから、今はもう20才ですけど」

「で、その子がなんで泣いて飛び出していったってわけ?」

葛巻さん、食いつきのポイントばっちり!

「実は、フランソワって覚えてますか?自分で言うのもなんなんですが、フランソワは私に好意を寄せてくれていて、それが原因で前の奥さんと離婚になっちゃったんです。奥さんとっても嫉妬深い人だから。離婚のあと、僕は日本に帰ってきて、そしたらフランソワも僕のこと追いかけてきて。で、サラにしたら、離婚させた悪い女が自分の父親とくっついちゃうなんて最悪でしょ。」

「でもあんた、実際フランソワとは何もないんでしょ?」

「はい、潔白です。友人として相談には乗りますが、それ以上の関係はありません」

津川さん胸を張る。

「じゃあ、なんで娘さんが泣くわけ?」

「それが……」

「だから何?」

津川さん、言いにくそう。

「こういうことははっきり言わないとだめよ。あとでしこりを残すんだから」
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