隣の津川さん
「ちょっと本田さん、しっかりしなよ」

本田白目を向いて立ち尽くす。

葛巻さんにおしりをパシリと叩かれて、自分を取り戻す。

「私はなぜ本田さんの容姿が気に入らないと娘が言うのかわからないのです」

ちょ、ちょっと、津川さん。

今のはきいたわよ~。

そりゃさあ、美人とは程遠いカオだってことは、本人がよ~くわかっていますよ。

でもねえ、私だって傷つくんだーーーーぁ!!!

「本田さん、いいんだよ、人間顔じゃあない。心だよ、心」

不憫に思ったのか宮田のばあさんが本田の手を握る。

「いいじゃないか、本田さん。オブラートにくるんでも仕方ないだろ。はっきり物言うことも大切なんだよ!」

さっきの優しさは幻覚だったのか。

いつもの葛巻さんにすっかり戻ってしまっている。

「あの、私はですね。本田さんのかわいらしい目と鼻が最高だと思うんです」

津川さんが顔を赤らめて言う。

つ、津川さん……。

私、やっぱり津川さんが……。

本田と津川さんしばしお互いの目を見つめあう。

これぞ愛のシンフォニー。
< 109 / 131 >

この作品をシェア

pagetop