隣の津川さん
「本田さん、私はあなたとお別れするときなんて言ったか覚えていますか?」

本田は、あの日別れ際に言った庄司のセリフを思い出そうとしていた。

「確か、私のこと好きって言ってたような……」

本田、記憶をたどりながら顔を赤らめる。

「まあ、それは若気の至りだと思って忘れてください」

庄司さん憮然としている。

「もしかして……」

「そう!そのもしかしてです」



あの日、確か庄司さんはさわやかに「小説を書く!」と宣言した。

それも本田自身を主人公にして。




「小説のことですか?」

「ピンポーン!そのとおり」

庄司さんは決めポーズのつもりか、人差し指で本田を指して、ウインクしている。
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