隣の津川さん
「僕は、あなたに宣言したとおり、そして、親父に諭されたとおり、生きていくことをあらためて確認したんです」

本田は直立不動のまま「うんうん」と庄司の話を聞く。

「だからまたこの街に帰ってきたんです。が、このマンションには住めません。家賃払えませんから。だから僕は人生をやり直すつもりで、風呂なし、トイレ、炊事場共同のおんぼろアパートを出発点と決めたんです」


なんだよ、庄司さん。

そんなの当たり前だろ。

自分で稼いで自分の住まいは確保するもんだ。



「それで、僕は梅の湯にいくために、このマンションの前を身を潜めながら歩いていたときに……」

「身を潜めるくらいなら違う道通ればいいじゃないか」

葛巻さんのナイスジャブ。

庄司さん目で葛巻さんを制そうとするが、葛巻さんだよ。

黙るわけないじゃんか。



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