隣の津川さん
「だいたい、あんたねえ貧乏なら銭湯に行くお金も切り詰めなきゃだめだよ。あんたのことだ、きっと毎日銭湯通いしてたんだろう」

「よく、おわかりで」

「で、銭湯の料金はいくらなんだい」

「六月から値上がりして430円です」

「よ、よんひゃくさんじゅうえん~?」

「それが何か?」

「何かじゃないよ。馬鹿だねえ、この子は。毎日銭湯に通ったら430円×30日分お金がかかるんだよ。12900円だよ。わかってんの?」

「え……ええええええ?!」

「これだから甘やかされて育った子はだめなんだよ。本田さんちのお風呂を借りたら、13000円近くも浮くんだよ」

「なんで私が庄司さんにお風呂貸さなきゃならないんですか!」

「あんた学校の先生だろ。奉仕の精神はないのかい?」

「ちょっと葛巻さん、話をずらさないでください!!!」



危ない危ない、危うく庄司さんに風呂を貸さなきゃならないところだった。



「で、庄司さん、このマンションの前を歩いてるときに何があったの?」

「そうでした。ずいぶん脱線してしまいました」
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