隣の津川さん
「サラさんはあたりをうかがうようにしながら、エレベーターに乗り込みました。僕は非常階段を駆け上り、恐らく上ってくるであろう階で待ち伏せしていました」

「何階で待ってたのさ?」

庄司さんは本田と津川さんの方を見つめた。

「このマンションに外国人の方が来るとしたら、それは津川さんしか考えられないでしょ」

再び庄司さんは続ける。

「サラさんは、エレベーターから降りると周りをきょろきょろしながら、津川さんの部屋を通り越し、本田さんの部屋のポストに何か入れました」

「それって!!!」

全員が同時に叫んだ。

「そうなんです。例の黒い封筒です」

「じゃあ、差出人はサラだったの?」

本田さんがポツリとつぶやいた。

父親の津川さんを隣になんとなく気まずい。

「いえ、それが……」
< 121 / 131 >

この作品をシェア

pagetop