隣の津川さん
土曜日。

明日は決戦の日。

本田は銀座のデパートのベンチでフロアガイドをひろげてうなっていた。

デパートに来たのはいつ以来かしら。

前に来たときも洋服などは買わなかった。



田舎の妹が上京してきたので、東京見物。

しめはデパ地下で試食三昧。

おなかいっぱいになってすっかり気をよくした本田は、1階の化粧品売り場で試供品もゲットしてやる~なんて息巻いて臨んだのだが、美容部員にすれば本田などひよっこ同然だった。

「お客様、きれいなお肌ですう。よろしかったら水分量のチェックなんかしていきませんか~?」

「あ、はい。」

この時点で本田、すっかり美容部員に呑まれている。

「あらあ、たいへん。お客様、ずいぶん乾燥しているみたいです。このままお手入れしないと、皺になっていきますよ。」

「え、そうなんですか?」

「そんなときには、新製品の保湿パックをおすすめしています。試しにつけていきませんか?」

「じゃあお願いします。」

とすっかり美容部員のペース。

結局数万円の保湿パックをお買い上げとなった。


まあ、結局この保湿パックが昨晩本田のお肌を潤してくれたわけだから、無駄な買い物にはならなかったわけだが。


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