隣の津川さん
フロアガイドには、4階キャリアファッションのフロアとあった。

自分にキャリアがあるかどうかはなはだ疑問ではあるが、勤続10年はとっくに越えているので誰も文句はないだろう。

本田はエスカレーターに乗って4階を目指した。

どこから何を見たらいいのかわからず、きょろきょろしていると、店員が話しかけてきた。

「お客様、何をお探しでしょうか。」

「えー、友人の家でちょっとしたパーティーがあって、そこに着て行く服を探しに来たんですが。」

「それはどんな感じのパーティーなんですか?ドレスアップしていくような感じですか?」

「うーん・・・。」

近所の人と津川さんの友人を招いてのパーティーと言っていたな。

近所の人はさておいて、津川さんの友人てどんな人だろう?

あのブロンドの長身美女のフランソワとかだったりして・・・。

「あの、恋人とデートする感じの服にしてください。」

「お客様、さきほど友人の家のパーティーで着る服とおっしゃっていたような・・・。」

「いいんです。恋人とのデートで着る服に変更です!」

本田は仁王立ちで店員に言い切った。

店員は困惑した顔で、本田を案内した。
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