隣の津川さん
津川さんは心配そうに本田の顔を覗き込み、

「何かつらいことがあったんですね。」

と言って、自分のハンカチをポケットから出して、本田の涙を拭いてくれた。

この状況なら「津川さーん」と泣きながら抱きつくシチュエーションも許されそうなものだが、本田は、


「ち、チクショーーーーーーっ!!!」


と叫んで、全速力でその場から走り去った。





本田はマンションの5階まで、エレベーターを使わずに階段を一気に駆け上がり、自分の部屋に入るなり号泣した。



「私はなんて大馬鹿野郎なの!」



本田がピンチの時現れる津川さんは、運命の人かもしれない。

それなのに、本田は自分からチャンスをことごとく潰し続ける。


全くもって不本意なことなのだが、幸福をゲットできない運命なのか、性分なのか、よくわからないが、全てが空回りしていることに腹が立ってどうしようもなかった。

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