隣の津川さん
ピンポーン。

おっ 誰か来た。

「あら、本田さん!」

「葛巻さん、久しぶりですね。」

葛巻さんはこのマンションの管理人。

ご主人とは数年前に死に別れ、今はこのマンションで住み込みで働いている。

推定年齢50代後半。


「津川さん、お招きありがとうございます♡」

葛巻のおばさんは妙に艶っぽい声を出して、腰をくねらせた。

そして本田に近づいて耳元でこそっと言った。

「津川さんて、本当に素敵だと思わない?」

「はあ。」

「あたしがさあ、エントランスの掃除とかしてるとさ、さっとドアを開けてくれたり、すごい気が利くのよ。しかも必ず話しかけてきて、何か必ずほめてくれるのよねえ。この前なんか魅力的な声だなんて言われちゃって・・・。あたしに気があるのかしらねえ。」

「はあ。」

「やだ!本田さん、あんた独身だけど、津川さんはだめよ。年も離れすぎてるし。その点、私なら釣り合いが取れると思うのよ~」

葛巻のおばさんは、本田の背中をバンバン叩いて一人で「いやだもう~」とピンク色の声を出してあえいでいた。

「あらあ、津川さん、私お手伝いするわよ。何でも言ってちょうだいね!」

葛巻はすかさずキッチンに入り込んで、大きなぶよぶよお尻を津川さんにこすり付けるように隣に立った。
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