隣の津川さん
本田はため息をついてそのイチャイチャ加減を観察していた。

「葛巻さん、女だなあ・・・。」

葛巻さんは一言話すたびに津川さんの体にタッチする。

男性が若い女性にお触りするセクハラの真逆だ。

あそこに割り込んでいく勇気を本田は持ち合わせていなかったので、遠巻きにその様子を眺めていた。

葛巻さんの大胆さの半分でも本田に備わっていたら本田の人生も変わっていたかもしれない。





ピンポーン。



今度は誰だ?


「すみませーん。本田さん、ちょっと私手を離せないので、出てもらえますか?」

津川に頼まれて本田がドアを開けると、庄司さんがそこに立っていた。

「本田さんも呼ばれてたんですか。」

庄司は意外そうな顔で本田に言った。

庄司も津川さんのお隣に住んでいる。

庄司と本田で津川さんを挟んでいる形になる。



「ふわわわわー。」

庄司があくびをした。

「あれ、庄司さん寝てないんですか?」

「そうなんです。僕昨日も仕事で徹夜だったから。」

庄司は自称小説家。

本当は小説家志望のフリーターだ。

仕事とは言っているが、おそらく自分のブログに発表する小説でも書いていたのだろう。
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