隣の津川さん
こいつら~・・・調子に乗りやがって・・・。


「言わせておけば、いい気になりやがって・・・。」

本田はわなわなと震えていたが、突然、首に下げていた紐を手繰り寄せて、Tシャツの下から何かを取り出した。

ただならぬ殺気を感じたのか、凍りつく津川さん宅リビングの一同。




「この紋所が目に入らぬか~!!!!!」

本田は首にぶら下げていたお守りを、校門様の印籠のように6人の前に突き出した。

そして何を思ったか、歌舞伎役者のように見得ををきった。



静まり返る7人。



次の瞬間。



フランス人3人が立ち上がり、拍手喝采を送った。


「オンダさん、すばらしい!」

だからオンダじゃないって、本田!

「今のはサムライか?」

「私は歌舞伎の系統じゃないかと思うが。」

「オンダ、水戸黄門見たことあるよ。前から聞きたかったんだけど、黄門さまはどうしてあの黒い小箱を出すの?」

「しかも、他のサムライはみんなひれ伏すよね。あれなんで?」


フランス人3人は本田を取り囲み、矢継ぎ早に質問を本田に浴びせた。

本田はさっきの剣幕はいったいどこに行ってしまったのか、しどろもどろに答えるのが精一杯だった。

「オンダ、すばらしい!」

3人は交互に本田を抱きしめ、キスの嵐を降らせた。

本田はわけもわからず、ただ成すがままに身を委ねていた。




「ちっ。」

葛巻さんがハンカチを噛み切りそうな勢いで悔しがっていた。

「なんで本田さんなわけ?しかもあれ印籠じゃなくてただのお守りでしょ。」


ディディエさんがまた叫びだした。

「トヨタ、ニッサン、オンダ、チンチン、コウモン!トヨタ、ニッサン、オンダ、チンチン、コウモン!・・・」

ドミニクもフランソワも肩を組んで合唱した。

「トヨタ、ニッサン、オンダ、チンチン、コウモン!トヨタ、ニッサン、オンダ、チンチン、コウモン!・・・」



恐るべしフランス人・・・。
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