隣の津川さん
仕方がない、話題を変えよう。

本田は渋々せっかくのチャンスをあきらめた。


「津川さん、フランス人のお友達とはどこで知り合ったんですか?」

「私が通訳の仕事をしてることはご存知ですよね。私は通訳の事務所に所属していて、そこで仕事をあてがわれていろんなところに行くんですよ。本田さんの小学校に行ったのも通訳派遣の依頼が区からあったからなんです。3人はフランス語学校の講師なんですが、来日当初僕が身の回りの世話をするために事務所から派遣されて、それからの付き合いです。」

津川さん、意外にお酒強いんだ。

さっきからワインをぐいぐい飲んでいるけれど、普通の顔をしてる。

「ちょっとにぎやかな人たちですが、みんな根はいい人なんです。」

津川さん、はにかんで言った。

「そうみたいですね。」

「ちょっと前からフランスでジャポネブームがあって、大好きなんですよ、日本文化が。サムライとか禅とか畳とかが王道ですが、アニメなんかも人気みたいですね。宮崎アニメファンも結構いるんです。それで日本に憧れて来日する人も多くて。フランスの通販とかで普通に売ってるんですよ。簾や畳みたいなの。」

「えーそうなんですか?なんかピンと来ないですねえ。」

「そうなんです。トトロとかいいですね~!」

とフランソワが割り込んできた。

「あの古き良き時代の日本が好きです~。田んぼに土間におばあちゃん、最高です!」

「いいですねえ。私も好きですよ。心が洗われるようです。」

「おー津川さんもそうですか。気が合いますねえ。」

二人はもう一度グラスを重ねた。
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