隣の津川さん
「庄司さん、そんなだから何年たってもうだつが上がらないんです。いつもいつも自分自身の現実から目を背けて、小説ったってどの程度のものを書いてるんだか。大体あなたいくつになるんですか?相変わらず田舎の両親から仕送りしてもらってこの生活を成り立たせているんでしょ。本当に自立したいんだったら、自分の力でやってみせなさいよ。今のあんたは情けない蛆虫ね。」

本田は自分自身でも驚くほど、次から次へと言葉が流れ出た。

「ウ、ウ、蛆虫~?」

庄司さんの顔は血管が切れそうなくらい紅潮しきっていて、握りこぶしがわなわなと震えていた。

「そうよ、あんたなんて引きこもりのニートよ。田舎の親からも厄介者なんでしょうね!」

庄司さんも本田もここが津川さんの家で、今日は引越しパーティーだなんてことはもうすっかり頭から抜け落ちていた。

今二人の中にあるのはお互いに対しての嫌悪感のみ。

他の5人はどうなることかと息を潜めてこの後の展開に思いをはせていた。


「本田さんね、あんたそんなふうにデリカシーのかけらもないから結婚できないんですからね!」

本田は自分のグラスに満たされていたワインを庄司さんの頭に撒いた。

庄司さんが着ていた白いシャツはみるみるうちに赤く染まっていく。

「こ、この野郎・・・。」

庄司さんの拳が本田の顔面を捉えた。

「い、痛っ・・・。」

本田の鼻の穴から血が滴り落ちた。

「女に手エ出すか、普通。」

本田は庄司さんの腕に噛み付いた。

「い、痛い、痛い、やめろ、離せーーーーーっ!!」

庄司さんが本田を振りほどこうとするが本田はスッポンのように庄司さんの腕に食いついて離そうとしない。

庄司さんは痛さのあまり、本田の腹に蹴りを入れた。

スッポンの本田も蹴りには適う訳もなく、庄司さんの腕に名誉の歯形を残して気を失った。



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