隣の津川さん
家に帰ってから不貞寝した。

自分はいつの頃からそういう気の遣われ方をされるようになったのだろうかと考えてみた。

毎年4月に行なわれる新職員歓迎会の席で、そういえば去年あたりから「次は本田先生の番だよね」って声が聞こえなくなっていた。

校長も教頭も私のプライベイトなことには一切触れない。

「本田先生は教育に情熱をかけられる方だから期待してますよ。」

校長のこのセリフは今思えば、「君は今後おそらく結婚はしないだろうから、お仕事がんばってね!」の婉曲表現だったのだ。

迂闊だった。

35歳は微妙なラインということだったのか・・・。



軽く不貞寝のつもりが本格的に眠ってしまった。



よだれを拭きながらソファーから起き上がると、時計の針は10時40分を指していた。

「いかんいかん、答案のまるつけをしないと・・・。」
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