隣の津川さん
本田は感動していた。

女性扱いされることは本田の人生が始まって以来初めてのことだった。

学生時代、男の子から丁重に扱われるのは、色が白くて華奢な、いかにも女の子という感じの子ばかりで、色黒で、骨格のがっしりとした本田は、いつも男子と同等にされていた。

学生の頃、本田もそれなりに好きな男の子もいたりしたのだが、

「本田、俺たちの友情は永遠だよな!」

なんて肩を組まれるのがいいとこで、それ以上の進展はまったくなかった。

もっぱら男子にとっても女子にとっても恋愛の相談役で、自分の恋愛などありえない状態だった。

最悪なのは、

「本田はいい奴だ。おまえと結婚する奴は絶対幸せになれるからな!」

と皆が太鼓判を押すのに、

「じゃあ、俺が。」

という男子は一人も現れなかったことだ。
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