隣の津川さん
そんな本田が、今、確かに女性として扱われているのだった。

「津川さん・・・。私、今までそんなふうに女性としてやさしくされたことなんてなかったから、どうしたらいいかわからないんです。」

本田は素直に自分の気持ちを打ち明けた。

津川さんは一瞬きょとんとした顔になったが、すぐにいつもの笑顔に戻った。

「こんなに素敵でかわいい女性なのに、あなたの周りにいた男性たちは何を見ていたんでしょうね。」

津川さんのメガネの奥の瞳はやさしく切れ長で、まつげが長かった。

一方本田は心臓が口から飛び出してしまいそうなほど、心拍数が上がりきっていた。

「津川さん・・・。」

「本田さん、僕は本田さんのこととても魅力的だと思いますよ。あなたは素直で、親切で、でもとても恥ずかしがり屋で・・・。僕が・・・。」

と津川さんが何か言いかけたところに、葛巻さんが現れた。

「ちょっと津川さん。本田さんのこと構ってると遅刻しちゃいますよ~。」

いいところに邪魔が入り舌打ちしたい気分だが、確かに遅刻してしまう。

津川さんと本田は、あわてて自転車にまたがりマンションを後にした。
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