隣の津川さん
「津川さん、お待たせしました。どうぞお入りください。」

本田の部屋に入った津川が一瞬たじろいだのを本田は見逃さなかった。

津川さんは遠慮がちに、本田の部屋の中を見渡した。

「ずいぶんいろんなものがあるんですね。」

本田の部屋はチープなもので溢れきっていた。

部屋の壁面には天井まで届く本棚がそびえたち、その中にはマンガ本、雑誌、もちろん教師という職業柄教育関連の本もあるにはあるが、なんといっても大部分を占めていたのはマンガ本だった。

その巨大な本棚にも入りきらず、床に山積みされているマンガ本の数と言ったら。

その横に旧式のマッサージ機。

中央には本田の食卓兼仕事机として機能しているちゃぶ台が置かれていた。

津川さんは興味深そうに「ちょっと失礼」といってマンガ本に手を伸ばした。

「おー、これは!」

津川さんが思わず声を上げた。

津川さんが手にしていたのは、昔のホラーコミック。
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