隣の津川さん
本田は津川さんに両手を力強く握られたまま、なんとか冷静に事を進めなければと、必死に考えていた。

そして決死の覚悟で、思いついた最高のセリフを言ってみた。



「津川さんは私の魅力がわかるって言うんですか?」

言った、言ったよーーー!

本田、がんばった。



本田はめまいがするほど、極度に緊張していた。

壁一面に並べられているマンガ本が自分のところに飛んでくるような感覚がした。



津川さんは、驚く様子もなく、微笑んだ。

「ええ、わかりますよ。」



「じゃ、じゃあ、言ってみてください!」

本田は勇気をもって津川さんの目をじっと見つめた。

本当は逃げ出したいほど、足ががくがく震えていた。
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