隣の津川さん
体育館で子どもたちを座らせ、講師の登場を待つ。

2年生全体で行なう授業なので子どもたちの数は120人ほど。

子どもたちにああは言ったものの多少のざわつきには目をつぶる。

こういう企画ものの授業ってわくわくしちゃうからね。



そこへ講師入場。

ベローさんは長身にブロンドの髪をなびかせ颯爽と歩いてきた。

その後に通訳の方と思われる日本人男性が続いた。

体育館の中は拍手で包まれる。


ベローさんが本田の横を通ったすぐ後、本田は肩を軽く叩かれた。

「本田さん、奇遇ですね。」

通訳の男性は、昨日のダンボールの男、津川だった。

津川は「ではまたのちほど」とさわやかな微笑を浮かべて、ベローさんとステージに上がった。



「ボンジュール!」

ベローさんは笑顔で子どもたちに呼びかける。

子どもたちも真似して「ボンジュール!」と大声で答える。



本田はぼんやりとその様子を見ていたが、頭の中はパニックだった。


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