隣の津川さん
「本田先生、本当にありがとうございました。浩輔のことを、よく見てくださっているのが、よくわかりました。今後とも宜しくお願いいたします。」

電話をかけてきたときの勢いはどこへ行ってしまったのか、花田はものわかりのいい一保護者になってしまったようだ。

本田が電話を切ったとき、職員室はしんと静まり返っていた。

「本田先生、いったいどうなったんですか?」

河本が食いついてきた。

「どうって、わたしもよくわからないのですが、今日は花田さんと心が通じ合えたような、そんな気分です。」

本田の言葉に嘘は無かった。

今まで苦手だった花田が、電話を切った後にはより近くなったような気がした。

不思議な清涼感に満たされた本田であった。
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