隣の津川さん
言葉がわからなくたってわかる。



この二人が親しい間柄で、何か問題が起こって二人はもめている。

女の方が泣きながら部屋を飛び出して、津川さんがそれを追いかけてきた。



ドアと壁の隙間から、サラという女が美しいブロンドの髪の毛をしているのが見えた。

そして追いかけた津川さんがサラの白く細い腕をつかんだ。

サラはそれを払いのけようとしたが、津川さんは離そうとしなかった。

そうして二人はエレベーターホールに消えて行った。



まるで映画のワンシーンのようで本田は顔の痛みを忘れて見とれてしまった。



二人が姿を消したのを確認してから、本田はよろよろとドアの後ろから這い出てきた。

唇に生温かいものが伝った。

手でぬぐってみたら真っ赤に染まった。


< 91 / 131 >

この作品をシェア

pagetop