隣の津川さん
本田は津川さんの部屋のドアを閉めたあと、自分の部屋に入った。

洗面所でタオルをぬらして鼻血の処理をし、鏡の中の自分と向かい合った。

鏡の中の本田は、額にこぶができ、鼻にティッシュが詰められていて、ドリフのコントみたいだった。

「アハハー、不細工。」

本田は鏡の中の自分を指差して笑った。

鏡の中の本田の目からはぼろぼろと涙が溢れ出し、やがてぼやけてよく見えなくなっていった。



本田はちゃぶ台の前に膝を抱えて座っていた。

「津川さん、やっぱり私津川さんとは不釣合いだ。」

遠くでパラララパラララ・・・とバイクの爆音が聞こえた。

本田はちゃぶ台に乗せられた、コロッケの包みに気がついた。



「そうだ、すっかり忘れてた。」


本田はすっかり冷えてしまったコロッケを袋ごと持ってかぶりついた。

「うー、おいしいよ。この味だよ。宮田のおばちゃんのコロッケ、最高だ。」

宮田のおばちゃんが頭に浮かんだ。

「でもなんでこんな日に限って2こずつなんて買っちゃったんだろう。」

本田はとめどなくあふれ出る涙をぬぐいながら、コロッケをほおばった。
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