隣の津川さん
「それなのに、本田さんは鼻血出してるし、おいおい泣くしでわけわかんないよ。いったいどうしたの。」

「ちょっと待って、葛巻さん。その前にちゃんと答えてください。何か目的があってきたんですよね。」

葛巻さんはすっとぼけようとしていたが、観念して話し出した。

「だってさ、さっき自転車置き場のところで聞いたでしょ。本田さんたらまだ津川さんとなんにもないって。」

「あ・・・。」

本田突然恥らう。

「私としたら、本田さんをなんとかしたいと思ってね。津川さんに直接、『本田さんのことどう思ってんの?』って聞いてやろうと思って。だって、津川さんて、なんかつかめないっていうか・・・ああもちろんダンディだから私も好きではあるんだけど、だいたい本田さんのことだよ。きっと曖昧に津川さん任せで付き合ってるんだろうにちがいないし。」

葛巻さんは本田の顔をちらっと見た。

「あの・・・図星です。」

本田は顔を赤らめた。

「ほらやっぱり!」

葛巻さんは親指を立てて、本田の顔の前に突き出してみせた。

「でも、もういいんです。」

本田はがっくりと肩を落とした。

「もういいって?」

「津川さんことのことは結局私の独りよがりだったんです。」

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