隣の津川さん
「だって、あんた、津川さんとうまくいってるみたいに言ってたじゃないか!」

「ええ。そのときはそうだと思ってたんです。・・・でも違ったんです。」

「何が?」

「私、さっき見ちゃったんです。」

本田は津川さんのドアから出てきたブロンドの美女とそのあとを追う津川さんのことを葛巻さんに話して聞かせた。

「あんた、そのときにドアにはさまれたって・・・。」

葛巻さんは憐れむような目で本田を見つめた。

「そうなんですよ。笑っちゃうでしょ。ほんとにマンガみたいなんだから。」

本田は泣きたいのをこらえて、精一杯おどけてみせた。

「でもさ、私には津川さんが二股をかけるタイプとは思えないんだけどねえ。」

葛巻さんが真剣な顔で言った。

「もしかしたら二股というか、津川さんにしたら私と付き合っている気すらなかったのかもしれません。彼にしたら単なる友人の一人。その証拠に私たちなにもないし・・・。」

「うーん。津川さんて外見日本人だけど、中身はフランス人だからねえ。私の見方が正しいか自信もてないわ。」


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