音〜聴覚を失った女の子の物語〜
いや、待てよ……

まだ寝ぼけているだけなんだろう。

きっと。
そうじゃなきゃ、おかしいでしょ?


小刻みに震える手を握りしめて、

お・は・よ・うって言ってみた。



自分の声が聞こえない。


口を動かす感覚はある。音がない。

聞こえないのかな。みんなが振り返らない。

おはよう

今度は出たのかな?

え……なんで?


お父さんもお母さんもお兄ちゃんも難しそうな顔。



どうしたの?

みんなが私に駆け寄ってきた。

なにしゃべってるの?
なんで泣いてるの?
わかんないよ、聞こえないよ。



声、聞こえない………。


伝えたいこと、
精一杯伝えた。


伝わるかな?










「なにも聞こえない。」

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