神様のいたずら
「・・・。」

美久さんは、ゆっくりと空を見上げる。

「・・・。」

わたしも、美久さんにつられて空を見上げる。

すると、美久さんは手に持っていた風船をそっと離した。

「あっ・・・風船がっ・・・。」

わたしは、少し驚く。

風船は、空高く飛んでいく。

そんな、空高く飛んでいく風船を美久さんは、見つめていた。

「九条くんは、神様・・・わたしたちは、人間・・・本当は縁なんかない・・・あの風船みたいに遠い遥か彼方にある空にいるんだよね・・・本当は・・・。」

「・・・。」

わたしは、美久さんの横顔を見つめる。

「わたしはね、ずっときょうくんや九条くん・・・いろんな人とずっと一緒にいた・・・ずっと、一緒にいられるって思ってた・・・。でも、そうじゃなかった・・・九条くんも他のみんなもあの空にかえちゃった・・・いつか、どこかでまた出会える・・・そう信じてたから、またこうやって巡り会えることができた・・・。それだけで、十分だよ。」

そう言って、美久はチョコにニコッと微笑んだ。

「美久さん・・・。」
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