Misaki-Forever

一斗はゆっくり走り出す
夏の海の香りと吹く風を感じて…
そして美咲を思いながら…



少し走ると綾音のすすり泣く声が聞こえた。

一斗は止まることなく
今度は、波打ち際を歩いた。


「綾音?」

「…今日はありがとう…」

「何言ってんだよ」

一斗は、おんぶしたまま歩き続けた。


「私、これでお兄ちゃんの元に行ける」

「バカなこと言うなよ」

「ダメなの…もうすぐ…私の心臓はバッテリー切れになるの
来月が最後の手術…助かる可能性は…半分以下」


一斗は愕然とした。


“あり得ない…葵が死んで綾音まで?"


綾音は一斗の背中に顔を埋めた。


「大丈夫だ!綾音は兄貴の分まで生きるんだろ?」

「一斗…ありがとう…私、生きたいよ、死にたくない」


一斗は俯き歩き続けた。


“美咲ゴメン…
今日だけは綾音だけを思うよ"



< 257 / 297 >

この作品をシェア

pagetop