Misaki-Forever

「藤ヶ谷さん!!待って」

背後から聞き慣れない男の声に思わず

「へっ!?…アタシ?」

と変な返事をして振り返った。

「あのさ、良かったらコレ使ってよ」

美咲の頭上に男の子が笑顔で傘をさし出してきた。

店の中にいた派手なカップルの男の子が声をかけてきたのだ。


“ん?今、藤ヶ谷さんって?言ったよね"


その男の子は背が高く見上げるように顔を見た。

何処かで見たような気もしたが全然、思い出せない。


「あっ、あの家近いので大丈夫です」

軽く会釈をして去ろうとするも、また

「美咲ちゃん待って、いいから…ネッ」

紺色の大きな傘を
美咲の手に持たせた。

“今度は美咲ちゃんって"

「あのっ、でも」

傘を返そうと思い差し出すが
受け取ってはくれず


「風邪引いちゃうし、俺たち車だから…」


男の子はまたニコッと笑った。




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