5分の1[短編]
1日が始まる
いつもと変わらぬ1日
違うのは……言い知れぬ緊張感と重圧
最期の晩餐ならぬ食事とも知らず
穏やかな時を過ごした彼
淡々と表情を見せず
冷徹に徹する
心には悲哀と虚しさ
手向けの線香の香りが
読経の声が
掻き乱れた胸に染み入る
覚悟――
命の尊厳を唱えながら
命の最期の瞬間に立ち合う
断末魔の叫びが襲ってくる
眠れぬ夜
1人怯えながら
5分の1
この手に残る感触
覚悟のボタン
命の消え去る時
心は無、空となる
無力な我が身を憂う
南無阿弥陀仏
ただ安らかにと祈る