愛を乞う、ケダモノ
伊原木くんがシャワーを浴びに行っている間、完全に目が覚めてしまった私はとりあえず窓を開けて空気の入れ替えをした。
ベッドのマットレスと布団には念入りに消臭スプレー。
もう一度嗅いでみたものの、鼻が少し麻痺していて香水の匂いを消せたのかそうでないのかよくわからなかった。明日天気が良ければちゃんと干そう。
「……馬鹿みたいだなあ」
ばふん、とベッドに仰向けに倒れた。
泣けるものなら泣いてしまいたい、でも涙は出てこない。
彼の浮気は、これが初めてじゃない。
指折り数えるのはとっくにやめた。キリがないのだ。たぶんもうすでに両手には収まっていない。
最初こそ泣き喚いて、怒鳴り散らして、別れてやろうとしたけれど。彼が私と同じくらい泣いて、何度も何度も謝って、縋りついてきたものだから。
きっと無理強いされたんだろう。
この人は優しくて押しに弱いから、振りほどくことができなかったんだろう。
誰だって間違いはあるんだから、と私は彼を許した。
それからしばらくして彼はまた過ちを犯した。頭に血が上った。ひどすぎる。今度こそ別れてやろうと思った。
でもまた、彼はぐしゃぐしゃに泣いて謝ってきた。
嫌いにならないでと懇願してきた。
根負けして、私はまた許した。
次はもうないから、と。