愛を乞う、ケダモノ
 


そして3回目。私に罪を告白し、泣いて謝り続ける伊原木くんを見てなんとなく察した。

ああ、これはたぶん、
そういう「ビョウキ」なのだ。




「凛子ちゃん、」

名前を呼ばれて、目を開ける。
シャワーを浴びて髪をしっとりと濡らした伊原木くんが、ベッドに仰向けになる私に覆いかぶさってきた。

背中に手を回してやると、彼はまた泣きそうな顔をして、ぎゅうと私を抱きしめ唇を重ねてくる。

「凛子ちゃん、すきだよ」

「……」

「凛子ちゃんだけ、大好き」

「……うん」


私と同じく彼も一端の社会人であり、ちゃんと稼ぎもある。だから私がいないと生活ができないという訳ではない。

しかもこれだけ頻繁に言い寄られるのだから、私と別れたってきっとすぐにまた新しい恋人はできるはずだ。

でも彼は必ず私の元に帰ってくる。黙っていられず過ちを包み隠さず告白し、泣いて許しを乞う。決して私を放そうとしない。


共に生活を送る中でもひしひしと感じる。
彼のこの言葉は嘘じゃないのだろう。

伊原木くんは本当に私が好きなのだ。

心から愛しているのだ。



肌を擦り寄せ甘えてくる彼に身を委ねながら、ああ、泣きたい、と思った。

泣きたい。泣きたいのは私の方だ。


この憎たらしくてかわいそうな男を、

私はどうしても嫌いになれない。


 
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