初恋はカフェ・ラテ色
30分後、飲み会はお開きになり、まだ飲み足りない人たちで2次会に行ったけれど、私は楽しく話せる状態じゃなくて、ひとりで電車に乗った。

ショックでなにも考えられないのに、足が無意識に向かったのは『カフェ・グラン・ロッソ』だった。

時刻は9時半をまわり、カフェは閉まっているのもわかっている。

洋輔さんはまだいたとして、話をする自信がないのもわかっている。

ただ、洋輔さんの顔が見たかった。

改札口を抜けてカフェに近づくにつれて脚の震えが始まる。

私、泣いてないよね?

下唇をぎゅっと噛んでから呼吸を整えてから、閉店されたカフェの前に立つ。

店内の電気はまだ煌々と点いていた。
 
私の目は洋輔さんの姿を探す。

いない……いなくて良かったのかもしれない……顔を見たら話したくなる。話せば……恋人のことを聞いてしまうかもしれない……帰ろう。明日になれば普通に接することが出来るはず。

深いため息を吐いて回れ右をして歩きはじめる。

「心春」

洋輔さんの声がして、ビクッと肩が震えた。


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